2008年 6月 2日

インターネット時代のメディア【下】

フジサンケイビジネスアイ
 
 

ネットが可能にすることの1つに、個人の「メディア化」があると思います。これは一般企業が自らメッセージを発信する「自家製」メディアを持つことと合わせて非常に大きな変化でしょう。発信者が特定できること(本名を名乗ること)により、メディアの市場価値は最も高くなります。


サイトを運営する誰もが、全国区に発信したいわけではありません。むしろ、近しい間柄の人に対してだけ頻繁にメッセージを送受信するための「ウルトラコミュニケーションツール」としてネットを活用した時こそメディアは影響力を持つと思うのです。

某大手SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も、設立当初は参加者みんなが、本名を名乗っていました。ユーザー同士が、お互いにやりとりするメッセージの内容や人物に対して信頼感を持つことができる、コミュニケーションツールとして価値のあるコミュニティになっていたような気がします。
しかしコミュニティが巨大化し、多くのユーザーが匿名で参加するようになってからは、初期のころにあった魅力は薄れ、メッセージの価値は「口コミ」から「噂」くらいのレベルにまで下がっていきます。


結局、個人のメディア化による価値、いわゆる口コミを発揮するためには、ある程度限られた世界で展開される必要があるのでしょう。さしずめ、実生活でコミュニケーションが可能である範囲+αくらいでしょうか。
企業がインターネットをビジネスで有効に活用できるかどうかは、自家製メディアと、メディア化した個人が鍵を握っています。企業はエンドユーザーという多くの個人と関わっています。もし、企業が自家製メディアを、メディア化した個人活動のためのプラットフォームとして位置付けることができれば、今まで以上に高い次元でネットが活用されるのではないでしょうか。

ユーザーを生み出すユーザー「マザーユーザー」の創造です。これは、企業の宣伝活動コンセプト、費用を一変させます。

個人メディアや自家製メディアの価値が向上しても、マスメディアに対する広告出稿がゼロにはなりませんが、マザーユーザーの増殖が始まれば、徐々に減っていきます。


▼執筆者プロフィール 
《こばやし・しげお》
早大卒業後、1988年リクルート入社。創刊を含めた情報誌全般の業務に関わる。ソフトバンク、ヤフー、アクセンチュアを経て、株式会社シープロド設立。企業のネット利用をプロデュースする一方、文科省プロジェクトで起業家育成にも携わる。

  
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